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「は、初めまして、峰石です。急にお邪魔して、ごめん…ね? それにバイトも。女の子だから急に出かける準備とか大変だよね」
久住は自宅に誉を連れて行く途中、真由にバイト頼むわ、と店に連絡し、事後承諾の形で妹に後任を任せたのだ。さすがに誉もそれには反対したが、「事後承諾は真由の専売特許になってっから、たまには俺もありだろ」などと言って聞く耳を持たなかった。
「ええっ、そんなこと気にしないでください! 大丈夫ですから! どうせ兄貴が急に言い出したんでしょ? …ところでぇ、峰石さんの下のお名前はなんていうんですか?」
真由は誉の気遣いにぶんぶん頭を振って否定すると、謙虚に振る舞いながらも興味津々な眼差しでずいっと誉との間合いを詰めた。
玄関で三人が立っているだけでもひしめき合っているに、久住兄妹に挟まれているこの状況はなんだろう、と一瞬気が遠くなった。
「誉だよ。誉って呼んでいい…」
「いいわけねーだろ。こいつは年下だぞ。なんで呼び捨てなんだよ」
誉の言葉尻を拾って全面否定をすると、久住は不機嫌丸出しの顔で上から見下ろしてくる。
「はあ? 兄貴だって凛ちゃんのこと呼び捨てにしてるじゃん」
「凛は身内だろ。一緒にするな」
「誉でいいって本人が言ってるんだもん。いいじゃん別に。ねーほまりん?」
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