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 山下の説明で〝特別室〟の理解はしたものの、肝心のそこへ入る理由が分からない。朝の事件は一方的な暴力だから自分は何もしていないがあることないこと言われていたら──、謹慎や停学といった重い処分を受けるものにはなると思う。だがそこまではいかないとなると、また別の事が理由になるはずだ。  一体何でこうなったんだと誉は頭を捻る。 「詳しい事は俺も聞いてないが、峰石、アルバイトしてるんだろ?そのせいで単位や成績落としてんなら良い機会だ、特別室で頭冷やして来い」  ぽん、と誉の肩に手を掛けると山下は颯爽と教室へ戻って行った。が、入り口で数歩後退して顔を覗かせ、誉を指差し 「特別室に行く前に、職員室の塚本先生のところへ行って訓示を受けるんだぞ」  有り難い忠告だけ残していった。 「マジかよ…」  誰かの言った言葉が思わず口をついて出てくる。指摘されたことは身に覚えがあり過ぎて次に出てくる言葉が見つからなかった。  身から出た錆だ。  モデルの仕事は放課後のみならず、平日の授業中までもスケジュールを組まれていたため、どうしても遅刻や早退を余儀なくされていた。事務所の方でも極力学業を優先させていたのだが、どうしてもまかないきれない部分は出てくる。そのツケが回って来たのだ。  それならば。  腹を括って裁きを受けるまで。決まったことはどうしようもないのだ。四の五の言わずに訓示とやらを聞きに行こうではないか。  誉は大きく息を吸い込むと、自分を奮い立たせるように拳を握った。     
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