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 久住に抱いている想いを、真由を通して聞かせている。照れくささと少しの緊張で、声が震えたかもしれない。 「…ふーん」  真由はそれ以上何も言わず、踏みっぱなしだったスニーカーの踵を上げてきっちり履き込んだ。 「幸せ者だね、…その人。──じゃ、行ってきまーす」  誉は出かける真由の後ろ姿に行ってらっしゃいと声をかける。声は平坦で表情も見ることは叶わなかったが、気分を害したのかもしれない。  女の子を傷つけるようなことはしたくないけれど、これが誉の精一杯の誠意だ。  久住以外に心を明け渡すことはできない。  求めてやまないのは久住だけだから。
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