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歯を食いしばりながら苦渋の選択をする久住に、誉はどうしたものかと眉間を押さえた。
そもそも誉は目には目を、を求めるような人間ではない。人と喧嘩したことも、ましてや殴ったことだってないのだ。第一に、暴力からは何も生まれない。
誉は平和的解決を考えあぐね、久住に秘密にしていたことを思い出した。それによって久住を怒らせ、二人の関係が拗れてこの状況に至っている。解決の糸口になるかもしれない。
顔から火を吹きそうなほど恥ずかしいが、久住とは付き合っているのだから、手を繋ぐこと以上のことだってしたい。それに本音を言えば、誉だってもっと触れ合いたいのだ。
「あの、これから言うこと、引かないって約束してくれる?」
誉が意を決して久住に尋ねると、神妙な顔をして頷いた。
「あ、あのさ、啓太がその、嫉妬したっていう原因、元はと言えば俺が急に余所余所しい態度とったから、変に思ったんだろ?」
「いや、おかしいとは思ったけど…。そレよりも加藤とじゃれてるの見て、なんで俺とじゃないんだよって思って。理不尽だけど怒りが湧いた」
「じゃれて…たっけ?」
加藤と戯れた記憶はないが、誤解でもあるのだろうかと思案する。
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