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 自分の中にこんなに強い感情があることを知り、驚きとともに怖くなった。誰にも渡したくない、という独占欲が純粋なだけではないと感じる。誰にも触らせたくない、見せたくない、自分だけを見てほしい──。心の中に渦巻く感情は醜いものばかりで、今ならまだ見ぬ恋敵にさえ嫉妬しそうだ。 「ああ、全部おまえのだよ。だから誉も──、全部俺のだ」  久住は、誉がはだけさせたシャツを脱ぎ捨て、誉の口唇を指先でなぞるとふっと笑んだ。 「やっぱり煽ってるのはおまえの方だろ」  触れられて、心地よさと陶酔感で思考がとろんと鈍り、しまりのない顔をしていたのかもしれない。羞恥で一気に頬に朱が広がり、誉は慌ててそっぽを向いた。 「だって啓太が…」 「俺が?」 「啓太が触ると…、気持ちいいんだもんっ」  半ば逆ギレのように涙目でそう訴えれば、久住は一瞬固まり、強張りを解くように大きく深呼吸をした。そして誉の腕をベッドに縫い止め、強引に舌で唇を割って貪りだす。 「んんっ!?」  驚いて声にならない声を上げるが、全く抵抗する気にならない。それどころか誉は自ら唇を開き、久住の舌を迎え入れた。艶かしく蠢めく舌と胸を滑る熱い手のひらが、誉の理性を溶かしていく。絡み合うお互いの舌がどちらのものか分からなくなるほど貪り、気がつけば誉の腕は解かれていて、久住の首に巻き付いていた。 「ぁ……んっ、ぅう」     
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