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 塚本が諌めるようにそう呼ぶと、チッと舌打ちして久住はそっぽを向く。 (久住啓太だ! 思い出した…)  書類棚に張り付いたまま、同時に自分の置かれた状況を察して冷や汗が出てくる。校内広しと言えど、全校生徒の処分を校長から一任されていると言われる塚本に、あのような口の聞き方をする人間など数少ない。それなのに自分はその久住に喧嘩を売るようなことをしたのだ。このさき高校生活を穏便に過ごせる気がしないどころか、何かしらの制裁を受けるのかもしれない。そう思うと誉は無意識に膝が笑い始めた。 (まずい。絶対ごめんなさいで済む相手じゃないじゃん…。跳び蹴りくらった人みたいになる? 仕事、いやその前に顔が! これでも商売道具なのに。どうすればいいんだよ。というか落ち着け? 落ち着く? 落ち着こう?!)  何故か三段活用まで飛び出してくるほど誉は恐慌状態に陥っていた。  カクカクと笑いっぱなしの膝を両手の拳で叩いて落ち着かせ、見つからないようにいったん職員室から抜け出す。とりあえず久住たちが居なくなった頃合いを見計らって、再び職員室に赴くことにすればいい。一時しのぎだろうが何だろうが逃げずにいられないのだ。これぞ悲しき弱肉強食。草食系非捕食者の性。     
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