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     4  結局久住とはあの後ほとんど会話をすることもなく帰った。店に客が立て続けに入ってきて、ウェイターの仕事でそれどころではなくなったのだ。  誉は混んできたことを幸いに、頃合いを見計らってこっそり帰ろうと身支度した。四人掛けのテーブル席に一人で座っているのはどうにも気が引けてしまう。ましてやアルコールの並ぶ店内で制服でいるのも居心地が悪い。  久住の様子を見ようと振り向くと、別のウェイターが誉のテーブルに「お待たせしました」と料理を持ってきた。  驚きつつも静かに置かれた皿の中身を見れば、ふんわりと湯気を立てたビーフシチューだった。疑問を貼付けた顔のままウェイターに振り返る。 「あの、注文してませんが…」 「久住からこちらのテーブルへと頼まれましたので、お召し上がりください」  男の誉でも見惚れるような微笑みで勧めると、お会計も気にしないで、と内緒話でもするように口元に人差し指を立てた。ウェイターは軽く頭を下げて踵を返すと、何事もなかったように他のテーブル席の注文を取り始めた。     
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