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そんな誉を余すところなく見ていた目の前のウェイターは、拳を口元に当てると遠慮なく吹き出した。何がツボに入ったのか肩を震わせ笑っている。
「ごめん。気を悪くしないで。さっき彼にも同じこと聞いたんだけど、同じようなこと言ってたから」
眦に溜まる涙を拭いながら、彼は落ち着こうと大きく息を吐いた。
「御崎です」
「え?」
唐突に、御崎と名乗ったウェイターは、自分を指差す。
「久住…啓太とは従兄弟なんだ。あいつ、見た目いかついから、みんな遠巻きにしてるだろ。あまり友達いないんじゃないかな? だから店に呼ぶような子がいるのに驚いて」
御崎は接客用の敬語からフランクな言葉遣いに変え、ふっと口唇を小さく笑みの形にした。
誉はどうリアクションしていいか分からず、片頬を引きつらせ乾いた笑いをこぼした。
久住と誉は友達ではない。だから御崎の言う、自分が働いてる店に呼ぶイコール友達、という図式は当てはまらない。そもそも誉自身、なぜこんなところに連れて来られ、食事を振る舞われたたのか皆目見当もつかなかった。何か意図があるのだろうけど、生憎昨日今日知り合ったような関係だ。まったくもって意味不明である。
難しい顔をして黙り込んだ誉の眉間を、御崎は人差し指でぐりぐり円を描きながらほぐす。誉は驚いて御崎を見上げると、
「可愛い顔が台無しだよ」
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