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 本気か冗談か分からない言葉を吐きながらそっと指を離した。  誉はその言葉にぴくりと反応し、ちいさな声で反論する。 「男に可愛いはない、です」 「それもそうだね」  初対面なのに生意気だったろうか、と気に病む間もなく御崎はあっけらかんと答えた。 「じゃあ、きれいな顔に訂正だね」  無駄に良い笑顔でそう付け足すと、よしよしと誉の頭を撫でた。完全にからかわれているなと悟り、がっくりと肩を落とした。  自分の方がよほど整った顔をしているだろ、と口の中でぼやいていると、背後のテーブル席からわらわらと客が立ち上がった。会計しに誉たちの方へとやって来る。これ幸いにと誉は切り出した。 「あの、シチュー美味しかったです。久住にごちそうさまでしたと伝えてください」 「うん。伝えとくよ。またおいで」  御崎はひらひらと誉に手を振ると、やって来た客の伝票を受け取り、会計をし始めた。誉は見ていないだろうと思いつつも律儀に御崎に向かって頭を下げた。  そっとガラス戸を抜けて店から出ると、街はスーツ姿の社会人や暇を持て余した大学生たちが行き交っていた。誉は店の前の通りを右左と振り返り、溜め息を吐く。 (久住にちゃんとお礼が言いたかったな)     
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