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 最寄り駅を降りて、したたかに降りだした雨のなか、歩き慣れた大通りから一本逸れた通りを歩く。事務所へ行くには大通りに面しているから遠回りになってしまうが、久住がアルバイトをしている店の前を通るため気が引ける。どのくらい気が引けているのかと例えるなら、妙齢の女性が素顔で出歩いているときのようなレベルだ。誉にはいまいちぴんとこないが以前遥夏が力説していたので間違いないだろう。  そんなことを真剣に考えながら、学校で久住に凝視された件を思い出し、誉は頭を抱えたくなった。驚いていたのか、それとも何か言いたいことでもあったのか、久住は判別出来ない表情で誉を凝視していた。思い出すだけで羞恥で身悶えそうになる。  焦りと緊張でパニックになり、意図せず見つめ合う形になった赤い顔をした男を、どう思うか容易に察しは付く。気持ち悪いか気味が悪いか。  とてもじゃないがそんな風に思われているであろう相手の視界に、のこのこ入れるほど心臓は強くない。学校にいたときでさえ久住の視界に極力入らないようにしたり、休み時間ごとにどこかで時間をつぶしていたのだ。 若干遠回りになろうが、雨で靴の中が水浸しで気持ち悪くなろうがどうってことはない。   自意識過剰をこじらせると、人間はある意味強くなれるらしい。  深い溜め息を吐いて、誉は傘をぎゅっと握り直した。  ふと雨音に紛れて微かに人の声が聞こえたような気がする。気になりつつも歩みを止めず先へ進む。夕方とはいえ雨のせいで視界も悪く薄暗い。おまけに大通りから外れているためほとんど人も歩いておらず、なるべくなら早く通り過ぎたいのだ。     
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