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「大人を弄んだ責任、取ってくれるよね」
坂上の顔が近づき、誉は慌てて傘を手放し、距離を取るべく力を込めて彼の胸に手をついた。本当は突き飛ばしたかったのだが片腕を取られ、上手く力が出し切れなかったのだ。だけど抵抗しなければこのままどこかへ連れ去られるかもしれない、そんな雰囲気がある。
恐慌状態に陥りそうになりながらも、なんとか状況を打破することを考える。スマホは上着の内ポケットでこの状況では助けを呼び辛い。ちらりと横目で確認しても通りを歩く人もいなかった。圧倒的に分が悪い。だけどこのまま走って大通りまで出れば人もいるだろうから、どうにか逃げれるはずだ。あとはこのがっちり掴まれた腕をどうやれば振りほどけるのか。
「傷付くなあ。そんなに拒まないでよ」
坂上は何ひとつ傷付いてなさそな顔でぐっと体を押し付けてきた。差していた傘を捨て、誉の突っ張っていた手をきつく握り込み、両手を引き上げた。そのままビルの壁に誉を押し付けると高い位置で腕を一纏めにし、体を密着させてくる。
「やっ…めろ!」
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