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 嫌悪感にからだが震える。触れられている部分が気持ち悪くて堪らない。引き剥がしたいのに腕力も体力も歴然と差があって、怒りに任せて暴れても坂上は意にも介していなかった。  悔しい。悔しい。悔しくて堪らない。  同じ男なのに何でこんな目に遭わなければならないのか。  中性的な顔立ちも、華奢な体も全部いらない。  もっと逞しく、もっと男らしくなりたかった。  嫌なことを跳ね返せる力がほしかった。  どんなに願っても、誉はただ相手の好きなように体をまさぐられ、怒りと悔しさで気が狂いそうになる。 (頭を使え! 考えろ! 何か考えろ!) 「はっ…な、せっ。この変っ態!」  坂上は路上ということも忘れているのか誉のブレザーのボタンを片手で外す。着ていたセーターごとシャツをズボンから引っぱり出すと、裾から手を忍び込ませた。  ぞわりと誉の背筋が震え鳥肌が立った。生暖かい息を近くに感じ、顔を背けて抵抗を試みても徐々に迫る坂上は、その抵抗すら楽しんでいるような表情で口唇を舐めた。 「かわいいね。震えて抵抗する姿もかわいいよ」  そう言うとうっとり誉を見つめ、這わせていた手を鳥肌で立ち上がった淡い色の頂きへすべらせた。右へ左へ、シャツの上から捏ねられ摘まれ爪で引っ掻かれる。何度も何度も執拗に。  嫌悪と羞恥と怒りで頭はいっぱいなのに力では勝てなくて、もう限界だった。     
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