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 誉は恥も外聞もなくありったけの声で叫ぶ。 「誰か、誰かたすけて! たすけ」 「悪い子だな。誉くん、酷いことされたいの?」  坂上はまさぐっていた手をはなし、叫ぶ誉の口を覆い無表情に告げた。 「…っ」  力でねじ伏せられ、声を出すことも叶わない。何も太刀打ち出来ない無力さだけが、嫌と言うほど身につまされた。  じわじわと視界が靄がかかったように滲んできた。  涙が瞳に膜を張り、景色を歪ませる。溢れた涙は、こぼれ落ちた。  誉は諦観し、目を閉じた。 「おい、何やってんだ」  そこへ突然声が掛かる。 「…っ!」  誉は聞き覚えのある声に、のどを震わせ声にならない声を漏らした。  久住だ。見なくても分かる。ほとんど会話らしい会話をしたことはなくても、彼のことは目に、耳に残っている。  隔絶された世界がいっきに突き崩された瞬間だった。  坂上が虚をつかれている隙に、誉は口を覆っている手を引き剥がそうと必死に顔を振ってもがいた。 「峰石、そいつは何なんだ。合意なのか?」  さらに地を這うような低音が尋ねてくる。こんなときでなければ怯みそうな怒りを含んだ声だが、誉はその言い草に思わず涙も引っ込んだ。     
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