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 セキュリティのしっかりしたマンション一階のエントランスに入ると、コンシェルジュも在中して、裕福層向け物件だということが一目で分かった。若干気後れしつつも久住に遅れないよう付いて歩く。エレベーターが七階のフロアに到着すると、同じように並ぶ一室の前で鍵を差し玄関扉を開けた。 「どうぞ」 「おじゃまします…」  うながされ入った室内は薄暗く、久住は靴を脱ぎながら照明スイッチを入れた。その後ろで誉は雨水がしみ込んだ靴下を片足立ちでバランスを取りながら脱ぎ、無造作にブレザーのポケットに突っ込む。まさか靴の中までびしょ濡れだとは言えず、慌ててハンカチを取り出して急いで足を拭った。  久住の後を歩きながら手当たり次第に明かりを点けている様を見て、そこまで必要だろうかとこっそり首を傾げる。 「…怖いかと思って」  最後にリビングの照明を点けると、まるで背中に目でもあるかのように久住はぼそりと誉の疑問に答えた。 「……」  頭にクエスチョンマークが飛び交う。 (久住は暗いところが苦手なのか?)  ぽかんと口を開き間抜け面を晒しているあいだに、久住はどこかからバスタオルを持ってきて誉の頭にかぶせた。 「冷えてんだろ。先に風呂入るか?」 「え、あぁ…いや、俺は大丈夫。ありがとう」 「じゃあ俺、入ってくるわ」  そう言うと久住はあっさりリビングを出て行った。     
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