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 今頃気が付いたが、彼はこの間会ったときと同じ白いシャツに黒のロングタブリエエプロンという薄着だった。誉もかなり濡れたとはいえ、ブレザーの下にセーターを着ていたおかげでそれほど寒い思いをしたわけではない。むしろシャツ一枚の久住の方がよほど寒い思いをしたに違いない。  誉は小さく項垂れた。  久住を巻き込んでしまっただけでなく、雨に濡れて張り付いているシャツにも気付かなかったのだ。おまけに先に風呂をすすめられもした。 (だめだめだな、俺は)  はあと大きな溜め息が出る。  これ以上迷惑にならないようにと、借りたバスタオルで全身を拭う。ひととおり拭き終われば、どうすればいいのだろうと時間を持て余した。とりあえずバスタオルを畳むと、久住がリビングに戻るまで体育座りで待つことにした。  エアコンから吹き出す温風と足元から暖める床暖房で、心地いい眠気を誘う。これが自宅だったらそのまま床にごろりと寝転んだだろう。 (今日はいろいろなことがあって疲れた。朝から雨で制服はびしょ濡れになるわ、眼鏡を掛け忘れて久住にガン見されるわ。挙げ句にさっきのこと…。もう何かも忘れて早くベッドで眠りたい)     
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