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 久住の提案に素直に甘える。えへへと照れ笑いしながら誉は久住を伺うと、おう、とぶっきらぼうに返ってきた。  たったこれだけのやり取りが嬉しい。好きという気持ちがあふれそうになる。同性なのにという心苦しさも後ろめたさも、今はどうでもよかった。ただ、この時間が嬉しかった。  ふと気配を感じて顔を上げれば、久住が怪訝な顔をして傘を手に立っていた。 「いっ…つから居たの?!」  久住との出来事を思い出しているうちに時間が経っていたようだ。驚きのあまり悲鳴を上げそうになった誉の心情を知らない久住は、 「そんなヘラヘラした顔してっから変なのにつきまとわれんだよ。誘拐されるぞ」  さらっと坂上とのことを当てこするように言い、行くぞと先を促された。  危機意識が足りないような言われ方にカチンとくるものの、言い換えれば危ないから気をつけろと心配されているのだと気付き、途端に嬉しくなる。  久住を好きだと気付く前なら、言葉通りにしか捉えられなかっただろうが、今では言葉に込められた意味や、人柄から気持ちを汲み取ることができる。それが思い込みであったとしても、心がそう反応するのだから恋の影響力は計り知れない。 「誘拐なんかされるわけないだろ。いくつだと思ってるんだ」     
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