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 ちらりと伺えば、案の定、加藤はにやにや事の成り行きを楽しんでいるようだった。そのことに久住も気付き、何か口を開きかけたので誉は畳み掛けるように言葉を連ねた。 「加藤、ちょっと俺と久住に接点あるってことがすごく珍しいみたいで、おちょくってるわけじゃなくて、その、心配されてるというか、俺、あんまり友だちいないし…えっと、何というか親心? 的な! たぶん! それに近い感じだと思う! 分かんないけど…」  誉がべらべら捲し立てていると「もういいか」と言うや否や、久住は誉を抱え上げ歩き出した。 「ちょっ…と! なに?! なんで?!」 「もう黙ってろ」 「黙ってられるわけないだろ! お、降ろせよ!」 「耳元で喚くな」  聞く耳持たないといった態度で歩調を緩めず歩く久住に、どうしたらいいんだと泣きそうになる。頬は益々赤くなり、目は涙目で、助けを求め加藤を振り返れば腹を抱えて笑っていた。  誉はなんて友だち甲斐のないやつだと憤慨したものの、相反してそんな風に思えたことが心を温かくした。    *** 「恥ずかしいから、そろそろ降ろして…」  そう言いつつも、恥ずかしいのを通り越して久住が何を考えて誉を抱えて歩いているのか分からず、顔を覆って得体の知れない恐ろしさにわなないていた。 (怒られる。絶対何か怒ってる。どうしよう。怖い。久住が離れて行ったら──…)     
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