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 加藤と別れて以降久住は一言も話さなくなった。てっきり教室へ戻るのかと思ったら、全く違うところへ足が向かっている。道中ちらほら生徒に出くわし、好奇の目で見られるたり揶揄が飛んできても久住は眼中にないようで、ひたすら無言で歩き続けていた。  ようやく目的地に到着したのか名前のないプレートを掲げてある教室の扉を開いた。室内はカーテンも閉められ薄暗く、おまけにいつから清掃をしていないのか埃っぽかった。  机と椅子が積み上げられ、広々とはしているものの、教室として機能していないことはありありと感じた。 「降ろすぞ」  興味深く室内を見回していると、久住にそっと降ろされる。 「ここ…空き教室だろ。勝手に入っていいのか?」  恐る恐る尋ねれば、久住は扉を閉めて振り返った。そしてその背を扉に預け腕組みすると口の片端を上げた。 「だめだろうな」 「だめだろうなって…」  困惑しながらそう呟くと、久住はズボンのポケットからスマホを取り出し操作し始める。すぐさま裏返して見えるように掲げ、誉をまっすぐ見据えた。 「今から三分やる。その間に隠してること全部言え」 「え…? 隠してること?」 「はい、スタート」 「えええ! ちょっと待って! 意味分からないんだけど! 何? どういうこと? 何言えばいいわけ?!」 「十秒経過ー」 「もーっ! なんだよそれ! 言わなかったらどうなるの、俺?!」 「酷い目に、あう?」 「なんで疑問系っ?!」     
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