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ぽつりと呟き、誉を詰った。それが合図だったように、久住はもう動きを止めることはなかった。
それでいい。
誉自身が望んだことだ。久住が欲しかった。夢の中で求めていたことを現実にまで手を伸ばしたのだ。
なのにどうしてか哀しい。胸が痛い。
好きだから、手を伸ばすべきではなかった。それだけは分かった。
「…っ」
上半身を脱ぎ捨てた久住が、ベルトを外しながら上から見下ろしてくる。険しく眉間を寄せながら、何か言い淀んで口を閉じた。
顔を背け、ぎりっと奥歯を噛み締めるその横顔を誉は苦い思いで見つめた。
久住は後悔しているのだろうか。
それとも、憐れんでいるのだろうか。
瞬間、誉は苛立った。挑むように久住を見上げる。
肌をあらかた晒された扇情的な状態にもかかわらず、掴みかかりたい衝動に駆られた。
憐れまれたくない。
可哀想なことなど何一つされていないのだ。
そんな目で見られたくない。
怒りで唇が震える。震えないように噛み締めれば、久住が誉の瞼を手のひらで覆った。
「馬鹿が」
久住は吐き捨てると、空いた手で誉の肌を宥めるように弄る。唇は耳元、首すじ、鎖骨とゆっくり辿りながら、きつく優しく交互に刺激を与えた。胸の尖りを熱い舌で舐め、柔く食まれればもどかしいような快感が背筋を抜ける。
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