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のろのろとシャツにボタンを嵌めながら、久住の言葉を無視した。
先ほどまで行われていた行為を、誉は他人事のように思い出す。
彼に組み敷かれ、身体を暴かれ、思うまま貪り尽くされた。痛みに呻いたけれど、ほとんど声を上げた記憶はない。早く終われとも、もっととねだるようなこともなかった。ただ、体中が熱く、獣のような行為だと思った。
「…俺がやる」
そう言いながら久住は誉の前で少し屈み、シャツのボタンを代わりに嵌めていく。制服を元通りに着せると、慣れた手つきでネクタイまできっちり締めた。
頬を優しく撫でられ、見上げると久住は弱り切った顔で誉を見ていた。
「もう泣くなよ…」
そう言われて初めて誉は自分が泣いていることに気付いた。
いつから泣いていたのだろう。何で泣いているのだろうか。
制御出来ない心が暴走して誉に涙を流させる。
「俺が、悪かった」
ぎこちなく誉を胸に抱き寄せ、苦しげに謝罪する。瞬間、カッと血が沸き立った。ありったけの力で久住を突き飛ばす。
「なに…謝ってんだよ…」
怒りで身体が震える。
そんな言葉はいらない。聞きたくなかった。
「全部俺のせいにすればいいだろ! 聞きたくないんだよ! 久住が言ったんだからっ…」
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