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「はいはい、なんだかご機嫌斜めかな。買ってきてやるから車で待ってて、エアコン切りたくないからさ」
やっぱり、いつものかっちゃんだ。うん、昨日の事は何かの間違いだ。そう、きっとそうだ。
「かっちゃん、バニラだよ。カップのやつね」
「知ってるよ、ひなチャンの事ならなんでも」
コンビニの駐車場に車を停めたかっちゃんは、降りるときに俺の頬にチュッと音を立ててぶつかった。え?ぶつかった?
昨日の事は悪戯でも、間違いでもなかったようだ。
かっちゃんが連れて来てくれたのは、海の家でも民宿でもなくて、お洒落な別荘。
「かっちゃん、ここって?」
「ここ?借りたよ」
そう言って楽しそうに笑うけれど、俺の家が丸ごと入りそうなリビングがある。ここを借りるのにいくらかかったのだろうと考えてしまう。
やたらと白い壁と、やたらと白い家具、真っ白って落ち着かない。通りに面した壁は大きなガラス窓で、こんなん外から丸見えじゃんと思ったけど、大きい庭のおかげで通りから見えることはないらしい。
「遅いなあ、そろそろ来るはずだけどな」
ぼそっと呟いたかっちゃんの言葉に驚いた。
「え?誰か来るの?」
「一人じゃさすがにそんなに金も出せないからね。心配しないで大丈夫、みんないいやつだから。大学のサークルの友達が五人だけだよ」
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