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自棄になって高そうな肉ばっかり食ってやった。みんな楽しそうに話している内容が全く分からない、知らない人の話ばかり。徳永というやつはやたらとかっちゃんの身体にべたべたと触るし。腹立つ、俺にだって友達はいるけど、シュウイチはあんなに俺の事は触らない。
んんっ?シュウイチ……?ああっ、忘れてた。今日はあいつにプール誘われていたんのに未読スルーの状態。
「かっちゃん、ちょっと友達に電話してくる」
取り敢えず電話入れて謝るのが大切。電話をして戻ってきたら、かっちゃんが……あれ?いない。
「克也、お前のそういうところ可愛いよな」
聞き捨てならない台詞が斜め後ろから聞こえた。振り返ると徳永って男が、かっちゃんの髪触っていた。慌ててそっちへ向かうとニヤッと笑った徳永がかっちゃんから離れていった。
「かっちゃん、あいつ誰?」
「あいつって?ああ、徳永?同じサークルの」
「だから、そこじゃなくて。あー、もう、いらいらする」
本当に何に腹が立つのかよくわからないけれど、何かに腹が立っているのだ。
「かっちゃん、俺もう寝る」
「そう?じゃあ二階の階段の右奥、その部屋が陽向の部屋だから」
「陽向の」と言われたその呼び方の声のトーンにも腹が立ったし、簡単に部屋に向かわせようとしたかっちゃんにも腹が立った。外で「ひなチャン」と呼ばれるのは普段は嬉しくない、けど今日は別だ。どうしても特別だと知らせたかった。誰をけん制したいのか分からないけれど。
「おやすみっ!」
それだけ言うと、先に二階へと向かった。なんだよ海に連れて行くって、泊りで連れて行くって言ってたくせに。
冷静に考えると確かに泊りで海に連れて来てくれた。二人きりじゃなかったけれど。嘘はついていない。
かっちゃんは嘘はついてない、けれど何故か楽しくもない。バルコニーに出て、星空を眺めた、どこまでも続く深い深い海の底のような夜空に吸い込まれそうだった。
「徳永っ!馬鹿野郎、腹壊してしまえっ」
何言ってんのか自分でもわからなかったけれど、何か叫ばずにはいられなかった。ちっともいらいらは治まらなかったけれど、とりあえずでかいベッドのど真ん中に大の字になって転がった。
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