家庭教師

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家庭教師

 「ひなチャン、おはよう」  あの海の日からほぼ毎日かっちゃんが遊びに来る。母ちゃんが「暇なら家庭教師してやってよ、破格でね」とかっちゃんに頼んだから、事態はややこしい方向へ進んでいる。美人の大学生のお姉さんに手取り足取り……じゃなくて、従兄に手取り足取り、変なところまでとられそうだ。  「ここ、違う。さっきも言ったろ、ルートついてるじゃん。お前、勉強できるのかと思っていたら馬鹿なのか?」  かっちゃんは毒舌だ、少なくとも俺のこと好きって言ったよな。なのに、馬鹿扱いはどうかと思う。そりゃ適当に勉強して第一志望の大学に入ったかっちゃんとは頭のつくりが違う。かっちゃんに言わせると、俺は運動能力以外をどこかへ置いて来たらしい。頭の中まで筋肉か?と呆れられつつ課題は例年にない速度で進む。  「陽向の家庭教師ってことは成果出さなきゃ、金貰えねえもん」  笑いながらのスパルタ教育。  言っておくが、俺の成績は決して悪くない、けれど決して良くもない。280人中145番、つまりぎりぎり平均値に足りない。シュウイチは277番、本人は三人も後ろにいると言っていたが、三人不登校だから、実質……まあ、人の事はおいといて。     
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