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慌てて階段駆け下りて、それから自分の部屋に戻った。心臓がばくばくして、怖かった。だから忘れることにした。何も見なかったことにして蓋をしたのに、俺は何を余計なこと言っちゃったんだろう。
「陽向、俺のこと気持ち悪いと思う?」
「思わない!」
「本当?軽蔑しない?キモイとか思わない?」
思うわけない、俺のかっちゃんだもん。それでもかっちゃんはこっち見ないで、ため息ついた。
「俺、かっちゃんのこと大好きだし、軽蔑も絶対にしない。母ちゃんにもおばさんにも言わないから」
「そう?じゃあひなチャンに口止め料を払っておかなきゃな」
口止め料って小遣いくれんの?と思ってたら、かっちゃんがやっとこっちを向いた。そして、にっと笑うと車を走らせ始めた。
「陽向、帰り遅くなるっておばさんに電話しとけよ」
「どこ行くの?」
「いいところ、期待しとけ」
「え、どこ?」
「んー、内緒」
しばらく走って目の前に見えてきたのは、洒落たイタリアンレストラン。友達と行くファミレスとは違う、入るのに制服で大丈夫って思うような店だ。
「あのさ、あのかっちゃん」
「こういうところで飯食ったことないだろ、ひなチャン」
「子ども扱いは止めてって、でもここ高いんじゃない?」
「大丈夫、バイト代入ったばっかだし。それにここ前から来たかったんだ」
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