6 聞きたいこと、言えないこと
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「……アホ」 彼女が目元に伸ばした、その手の下に俺の指が滑り込む。 「もう、知らないからな……」 ため息混じりの呟きに、え?と見上げるより早く彼女を腕の中に納めた。 「田野……倉さん?」 「俺の前で泣くなって昼間に言っただろうが。ちゃんと警告してたのに、それでも泣くならもう、我慢しないからな」 その腕に力が入る。
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