1章 神さまとの出会い

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 涼太も朔も悟も、もちろん俺も、いまはもう10円から手を離してしまっている。  だが1つだけ残された手が、いまだ10円を押さえつけいた。  白くて、柔らかそうな獣の手……。 「……なぁ、動かしてんの、そいつだろ」  恐る恐る指をさす。 「……そいつ?」  涼太は首を傾げながらも、俺の指差す方へと視線を向ける。 「どいつだ?」  もしかして、見えないとでも言うのか。  それはそれは小さな狐のような生物が、机の上にいるというのに。  キーンコーンカーンコーン――  無情にも授業開始のチャイムが鳴り響く。 「席つけよー。いつまで弁当食べてんだ?」  チャイムとほぼ同時に、先生までもが入って来た。 「マジ、先生早くねー?」  涼太は文句を言いながら、紙と10円を掴み、自分達の席へと戻っていく。 「……大丈夫か? ケイ」  あまりに動揺している俺を見てか、朔が声をかけてくれる。  俺は反射的に大丈夫だと頷いてしまっていた。 「ま、涼太なりにケイのこと、楽しませようとしてくれたんじゃね?」  隣の席に着いた朔は、そう言いながら教科書を取り出す。 「……そうだな」  俺もまた、平静を装い教科書を取り出した。
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