1章 神さまとの出会い

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 最近、俺がやたらぼんやりしてしまうのには、理由がある。  つい2週間ほど前のこと。  飼っていた犬が他界し、俺は軽いペットロス状態に陥っていた。  自分が生まれた頃から傍にいたため、兄弟同然で、傍にいるのが当たり前だったのに。  俺よりも速いスピードで成長し、寿命を終えてしまった。  朔も悟も涼太も、俺が溺愛していたペットが他界したことは知っている。  今はあえてその話題に触れないでいてくれるが、なにかしら気にしてくれているのだろう。  友達の優しさが身に染みる。  だが、いまはそれどころではない。  俺の目の前では、残された狐もどきがあたふたしている。 「朔、これ、見えるか?」  授業が始まったにも関わらず、俺はこっそり隣の朔に確認する。 「……どれ」 「狐……みたいなやつ」 「狐は見えねぇけど」  つまり霊とかそういう類のものか。  自分に第六感があるとは思いもよらなかったが、こういうかわいい霊なら悪くない。  恐る恐るシャーペンを近づけてみる。 「……っ!」  狐もどきは体をビクつかせ、逃げてゆく。  どうやら宙に浮けるらしい。  ゆっくりした速度で、それでもなんとか俺から距離を取る。  じたばたと宙を彷徨ったかと思うと、教卓に隠れてしまった。  傍にいた教師も、黒板に目を向けていた他の生徒も、気付かないのだろうか。  自分だけが見えるというのは、特別でもあるが孤独でもある。  嬉しいような寂しいような怖いような。  妙な感覚を抱きながら、俺はやっぱりぼんやりしながら、先生の話に耳を傾けた。  次の授業は体育で、着替えや移動をしていたら遊ぶ暇などない。  授業で思いっきり体を動かす。  とはいえ、やっぱり俺は適当に流すだけだが。  教室に戻って来たころには、狐もどきのことなど忘れてしまっていた。
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