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「じゃ、またなー」
放課後。
涼太も朔も悟も電車通学で、自転車通学の俺とは違う。
教室を出て行く3人を見送り、俺は1人、のんびり帰り支度をする。
そのとき、なにか妙な気配を感じた。
顔をあげると、ふわふわ浮遊する例の狐もどきと目が合ってしまう。
「あ……」
思わず声を出す俺を見て、狐もどきは距離を詰めてくる。
「あの、あの! 私の声、聞こえますか!?」
「……まあ一応」
どうやらこいつは日本語をしゃべれるらしい。
「見えるんですね! よ、よかったですー! さっきから誰に話しかけても聞いて貰えなくて……」
涼太達の反応を思い返す。
おそらく、あいつらには見えていない。
というより、俺だけに見えている存在のようだ。
幸い、教室にはすでに俺1人しかいない。
1人でぶつぶつ話していた所で、怪しむ人もいないだろう。
「君って、動物霊とかそういうやつ?」
「ち、違います! 私は人間の皆様にお告げをする役目を担っている者でして……」
「お告げ? なにを教えてくれるんだ?」
「それはまだ、どういったお告げを求めていらっしゃるか、伺ってないないので」
「ふーん」
なんだか難しそうな話だなと、適当に流す。
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