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序章
「かんぱーい!」
成人式を終え、久し振りに再会した高校時代の友人達と居酒屋に直行する。
同級生10人ほど。
ちなみに男子校だったため、女は1人もいない。
まあ、その方が気楽ではあるし、なんだか高校時代を思い出す。
「あっれ、ケイちゃんそれウーロン茶? ここはビールでしょ」
高校時代、一番つるんでいた友人、涼太が肩を組み絡んでくる。
「俺の誕生日、明日だから」
「あ、まだ未成年かー。ケイちゃんかわいそー」
いっそ1ヶ月後なら諦めもついたが、1日後となるとつい誘惑に負けそうになる。
だがここでみんなに合わせて飲みでもすれば、捕まるのは俺だけ。
そんな惨めな状況にはなりたくない。
「なな、覚えてる? 高2んときさー」
このメンツが揃えば、話題はもちろん学生時代の思い出話だ。
先生のこと、休み時間にやったくだらないゲームのこと。
たかが数年前だが懐かしく感じる。
「コックリさんやったの。ケイちゃん1人、マジでびびってたよな」
「お前、変なこと覚えてんな」
「もしかして忘れてた?」
「忘れてねぇよ」
忘れるわけがない。
「どーせアレ動かしてたの、涼太だろ」
涼太の隣にいた朔が、俺達の話にそう割って入る。
「ビビってるケイ見て、一番楽しんたもんな」
「俺じゃねぇって。朔、お前だろー」
「俺は涼太に付き合わされただけだし。わざわざ動かそうとか考えもしなかったし」
涼太と朔と、遠くに座っている悟と、俺の4人で、ひょんなことから休み時間、やることになったコックリさん。
俺1人だけがびびっていたのは確かだ。
あのとき、俺に大きな変化が訪れた。
おそらく涼太も朔も悟も、思いもよらない状況に追い込まれているのだが――
時は、約5年前にさかのぼる。
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