第一話

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第一話

 ベッドの上でブレスレットを拭いていたら、いきなり目の前に執事風の男が現れました。  一瞬、魔法のランプかな? と思いました。  思わず心の中でナレーションしてしまったほど、目の前の光景の意味がわからなかった。  だって、どう説明しろと?  玄関の鍵は閉めている。窓も、熱帯夜対策でエアコンをかけているからぴったり閉めている。  他人が侵入できる箇所はどこにもないのに、赤の他人が立っているのだ。 「お迎えいただき、ありがとうございます。ご主人様」  しかし、目の前の男は丁寧なお辞儀を披露し、柔和な笑みに似合わないきらきらとした淡い緑の双眸でこちらを見つめている。歳は同じぐらいに見えるが、ドラマや映画でしか見たことのない燕尾服を身につけた上に落ち着いた声音をしているせいで、不詳に思えてくる。 「本日この瞬間より、貴方に精一杯お仕えいたします。どうぞよろしくお願いいたします」  胸の下に片腕を添え、男は再び恭しく頭を下げてくる。  多分、とても長い沈黙を流していたと思う。それくらいの時間をかけないと現状の整理はできない……と思っていたがやはり無理だった。     
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