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一定のリズムで、耳慣れた機械音が鳴り響いている。昨日と変わらない休日がやってきた。
「おはようございます、ご主人様。今日は、昨日に比べると気温は低めですよ」
心地のいい低めの声が耳元に注がれて、「いつも」はあっけなく壊された。昨夜の出来事は現実だと、いやでも提示された気分になる。
「ご主人様、昨夜の約束を覚えておいでですか?」
忘れたくとも忘れられない。恐る恐る、ベッドサイドを見やる。
「エメラルド、ある……」
緑の小粒は、昨夜と同じ淡い色を放っていた。
「はい。これで、私のことを受け入れてくださいますよね?」
明らかな睡眠不足でぼんやりする頭を、弾んだ声が強制的に覚醒させる。人間、精神バランスが崩れると笑いもこみ上げるらしい。
オーナー、これはインチキを通り越して現実味がなさすぎます……。
「ご主人様、朝食になさいますか? ああ、その前に洗顔とうがいでしたね」
まだ返事をしていないのに、翠はものすごく張り切っている。そんなに赤の他人の世話をするのが嬉しいのか、いや、エメラルドの化身だから他人ではないのか。もう思考回路がわけわからない。
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