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とりあえずブレスレットをリビングのテーブルに置いて、洗面台に向かった。少しでもいいから頭をすっきりさせたかった。
これからの予定を脳裏に並べる。まずは二駅行った先にあるホームセンターの天然石ショップを覗いて、よさげなものがあったら買ってみよう。その後は日用品と食料を調達しないといけない。
あくまで普段通りの休日を過ごそう。
「……もしかして、命令待ち?」
Tシャツを脱ごうとしたところで、寝室前で立ち尽くしている翠を振り返った。
「はい! 朝食をお作りしてもいいのであればそうさせていただきますが」
「作るって、俺が何食べたいか知ってるって言いたげだな」
「もちろんです。目玉焼きを載せたトーストとウィンナー、ホットブラックコーヒーでしたよね?」
一つの間違いなくすらすらと口にした翠を、完全に振り返ってしまった。
「な、んでそれを知って……」
「ずっと、ご主人様と共におりましたから。趣味嗜好、行動パターンも大体把握しております」
そして燕尾を翻した黒い背中を呆然と見つめる。
「マジ、か……」
無意識に、ブレスレットに手が伸びる。淡く輝くエメラルドをそっと撫で上げると、キッチンの方から短い悲鳴が聞こえた。
どうやら、本当にこの状況を受け入れないといけない……らしい。
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