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「あれっ、浅黄先輩。今日はブレスレットつけてないんすね」
「まあ、ちょっとね」
「……もしかして、落としました?」
「ちゃんとウチにあるよ。いいから仕事しなさいって」
隣の自席に戻ってくるなり目ざとく突っ込んできた後藤大河を軽くあしらって、パソコンに無理やり意識を戻す。
彼が二年前に入社してから隣同士で、いろいろと相談に乗っていたのもあって一番仲がいい後輩だった。
お調子者なのが玉にきずだが、仕事は丁寧で飲み込みも早い。今関わっているプロジェクトに限らず彼も同じチームにいる場合が多く、会社側からはどうもセットで扱われている気がする。
翠は今朝もアラームの役割を果たし、いつもの朝食を用意してくれた。ブレスレットはどうしても持ち出す気になれなかったのだが、昨日とはうって変わり、主張をあっさりと承諾して不思議と落ち着く抱擁をしてきた。
尊重してくれるのはありがたいが、今後どう接していけばいいのかわからない。
何せ、自分だけのスペースに突然割り込んできたようなものなのだ。ブレスレットで考えれば約三ヶ月間一緒にいたとしても、両手を広げて歓迎できる状態にはとてもいけない。
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