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「それは……私の料理は、文秋さんの見よう見まねですから」
翠が嬉しそうに微笑む。
三ヶ月一緒にいたという事実が、またのしかかる。
「文秋、さん?」
「……君、本当にずっと、いたんだな」
どんな表情をしていたのかわからなかったが、立ち上がった翠は深く頭を下げてきた。
「昨日は、文秋さんのお気持ちも考えず一方的になってしまいまして、本当に申し訳ありませんでした。文秋さんに直接お仕えすることが夢でしたので……浮かれすぎました」
「いや、別にそんな謝らなくても」
改まって謝られても困惑してしまう。
「ですが……それでも、敢えてお伝えいたします」
翠の視線が、まっすぐに向けられる。
「私の気持ちに変わりはありません。誠心誠意お仕えしたい。文秋さんの心身をお護りしたいのです」
優しくありながら、強い。ふたつのエメラルドは、一途な光で自分を照らす。
「決して無理は申し上げません。少しずつでも文秋さんの信頼を得られるよう、尽力いたします」
ブレスレットにある本体よりも、まぶしい。まぶしくて、直視していられない。
卑怯かもしれなくても、目を逸らすしかなかった。
もはや、驚くしかなかった。
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