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第二話
次の日になっても、翠の容態は回復していなかった。
アラーム代わりの声掛けがなく、朝食の用意もないまま、昨夜と変わらない場所でぐったりとしていた。
「浄化、全然効いてないじゃないか……!」
月光浴をしてもらえれば大丈夫だという言葉に従い、一晩中ブレスレットを窓辺に置いていたのだが結果は変わっていない。満月でないのかいけなかったのか、他の理由があるのか、教えてもらえる余裕もなさそうだ。
とりあえず手早く支度を済ませて、スマートフォンで浄化について調べる。他に有効そうな方法はブレスレットにも使われている水晶を使うものだった。天然の氷柱をひっくり返したような、水晶の塊であるクラスターと呼ばれるものや、小石ほどの大きさの水晶たちを器に敷き詰めた上に、ブレスレットを置いておけばいい。だがタイミング悪く、どちらも買い揃えていなかった。
荒い呼吸を繰り返す翠を見つめながら必死に思考を巡らせる。
あの状態が続くとどうなる? よからぬことが起きるのは間違いない。最悪、消えてしまう可能性もありうる。
――消える? 翠が?
もし消えたとしたら……ブレスレットは、エメラルドは、どうなる?
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