第三話

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「とにかく、そういう目では一切見てません。わかったらおとなしくしてるように」  小声で改めて突っ込んで自席に戻る。後藤もすでに戻っていた。……が、動きが止まっている。心配して声をかけると、大げさに反応された。 「あ、す、すいません。ちょっと考え事してただけなんで、気にしないでください」  珍しいなと思いつつも、仕事モードが進むにつれて頭の片隅に追いやられていく。  意味不明な翠の質問も脇に置いておきたかったが、家に帰っても口調が若干刺々しかったり、名前を呼ぶたび変にまぶしい笑顔を向けられれば黙って流す真似もできなかった。 「後藤が好きだのどうのってまだ気にしてるのか?」  ビールを持ってきてくれた翠に前置きなく問いかける。 「何でそんなにこだわってんのか謎だけど、本当にないから。後藤は彼女ほしいーってよく言ってるし」  翠は無言のまま隣にゆっくり腰掛けた。テレビのリモコンには手を伸ばさない。 「……後藤様と文秋さんの仲がよろしいのは承知しておりました。ですが、実際この目で見たら……その」  言葉を切った先が気になるのだが、語らずに頭を下げてくる。 「差し出がましいことをいたしました。もう、忘れてください」  いまいちすっきりしない。今度は自分の眉間に皺ができそうだ。     
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