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「俺の好きな人でも聞き出したかったわけ?」
「いえ、そういうわけでは……」
「後藤にも定期的に訊かれるんだけど、いないんだよ。そこまで興味持てないっていうか」
女性が嫌いなわけじゃない。何人かと付き合った経験もあるが、いずれも長続きはしなかった。敢えて気になる女性を挙げるならあのオーナーとなるが、化身の主同士としての仲間意識が強いのと、男女関係なく普通に仲良くさせてもらいたいという気持ちが大きい。
基本的に、他人相手に心を揺さぶられることがほとんどない。振られる時の「私を好きかどうかわからない」という台詞にすべてが込められていると思う。
そういう意味では、翠は初めての相手だった。振り回される日々もすっかり定着してしまった。
「……なんで、ちょっと嬉しそうにしてんの」
やっぱり、答えてはもらえなかった。
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