第四話

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『俺だって、ブレスレットがないのは心許ないよ。でも、まだ俺は翠の力をちゃんと把握できてないから、余計に心配なんだ。俺を助けると思って、頼むから聞き入れてほしい』  端末ごと両手で包み込んで頭を下げると、翠はほぼ反射的に案を受け入れることを了承してくれた。 (全くの嘘じゃないけど、利用したみたいで良心は痛むよな)  改札を抜けて、足早に駅の出口へと向かう。週の中日はどうしても疲れが溜まるから、早く帰ってベッドにダイブしたい。  スラックスのポケットから振動が伝わった。画面を確認して、返事の早さにびっくりする。電車を降りる前に連絡を入れたばかりだった。 『お仕事本当にお疲れ様でこざいます! 首を長くしてお待ちしております。何かありましたらすぐにご連絡くださいね』  やっぱり親みたいだ。  胸の辺りがほのかに温かい。気を抜くと口の端が持ち上がってしまいそうになる。 「お帰りなさいませ! 鞄、お持ちしますね」  出迎えてくれた翠が忠犬のようにも見えてきた。鞄を持ってリビングに向かう後ろ姿は、尻尾を激しく振りながらおもちゃを咥えて駆け出しているようだ。 「……え、何か、やけに豪華じゃない?」     
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