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「いや、わかってないよ? 全然わかってないから」
冷静を努めて突っ込んでも、目の前のエメラルドの化身とでも言えば正しいのか、とにかく翠はにこにこと、柔和な顔にふさわしい笑みを刻んでいる。
理解しろというほうが無理だ。テレビで映画を楽しんでいたらいきなりその世界に連れて行かれました、レベルの超常現象をどう飲み込めと言うんだ。
「しかし、仰っていたまとめは完璧でした」
「俺が言ってるのは、どうしてそうなるの? っていう意味。だって、普通ならこんな現象ありえないから。まだ、どこかの執事なのに間違えてここに来ちゃいましたっていうほうが理解できるよ」
翠は困惑したように眉尻を下げた。眉の上で前髪が整えられているから、表情がよくわかる。
改めて見ると、人間と変わらない。変わらないからこそ、混乱が収まらない。
「しかし、現に私はこうしてご主人様のもとにおります。エメラルドが持つパワーを授ける以外の補佐も可能になったのです。ですから」
「そう言われても、どうやって信じればいいんだよ……」
これは夢なんだ。そう思わずにはいられなくなってきた。
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