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やはり、それなりに負担のかかる行為だったらしい。いくら精製より疲れない行為だと言われても、相対的にしか比較できておらず、知識不足を改めて実感する。
「……兄さんは、ちょっと入れ込みすぎだよ。まさかとは思うけど」
「藍。本当に私は大丈夫だから」
翠の表情はますます硬くなる。首を振る動作が、拒絶に見えた。
「現に、こうして問題なく動けている。毎日、きちんと役目を果たせている。文秋さんが気を配ってくださっているおかげだ」
「で、でも!」
「文秋さんをお護りするのは私にとって何よりも大事な、最優先事項なんだ。パワーストーンの化身である藍が、それを制限するのか?」
反論が尽きたのか、藍は口元を細かく震わせている。翠の意思は言葉だけでもぶれがなく、完璧だった。
「別に、俺はいいよ」
だからこそ、自分がいる。
「文秋さん!?」
驚愕する翠の隣で、藍も目を丸くしている。
天谷に心の中で深く頭を下げながら、続ける。
「天谷さんが許可してるなら、ちょうどいい機会だし甘えさせてもらおうかなって。藍くんスパルタだけど、いろいろ教えてくれるし」
翠の無言の圧力が重石のようにのし掛かる。なるべく彼の方は見ないようにして、藍に笑いかけた。
「わかってるじゃない。千晶のことは心配しなくていいよ。何かあったらちゃんと行くし」
「文秋さん!」
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