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第三話
「今日は先輩の機嫌いいですねー! 先週はほんとどよーんとしてたから、オレどうやって励まそうかと必死に考えて考えて」
「そんなこと考える暇があったら仕事しなさい」
「してますよー。むしろ、先輩のほうがあんまり仕事手につかなかったんじゃないすか?」
全くその通りすぎて、何も反論が出ない。ここまで遠慮がないと不快を抱く人もいるだろうが、仲良くしている影響もあるのかそこまで気にはならない。彼の人徳のおかげもあるだろう。
本当に、先週の気分が一新された。昼にローテーションしている店で、頼んだメニューも過去と変わらないのに、おいしく感じるほどだ。
コップの水を飲み干した後藤は、左腕に視線を向けた。
「やっぱり、そのブレスレットは先輩のお護りなんですね」
ブレスレットを装着した瞬間、思わず腕を抱き寄せていた。
本体からもたらされる、包み込むような安心感はふさわしい言葉も出てこない。翠が与えてくれていた力はあくまで一部だったのだと実感する。
「……うん。改めて、そう思ってるよ」
『後藤様の理解力、素晴らしいですね……』
頭の中で、どこか悔しそうな翠の独り言が響く。
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