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悪食孔雀の肉は固く
まるで巨大なゴムを切っているようだった。
皆がフォークを突き刺す。
ぶにっと肉が揺れた。
「召し上がれ」
やめようと言う者がいないから
仕方なく続けた。
理由は簡単。
誰も自分が一番最初の卑怯者になりたくなかったんだ。
「鶏肉みたいだ」
由莉が自分に言い聞かせるように言った。
「そうだね。烏骨鶏は確かこんな色だ」
響也も手首のフリルをひらひらさせながら
いかにも余裕のある笑みを浮かべる。
僕も何か言わなきゃ思ったけれど――。
履き慣れない
細身のハイウエストのパンツは窮屈で。
「……うん」
癖のある孔雀肉の臭いを嗅ぐまいと
息を止めているだけで精一杯だった。
そうしてそれぞれが
一口目の肉を口に運んだ瞬間。
「……」
「……ああ、神様」
キャンドルは吹き消され
晩餐会はお開きとなった次第だ。
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