第11章

4/26
前へ
/26ページ
次へ
悪食孔雀の肉は固く まるで巨大なゴムを切っているようだった。 皆がフォークを突き刺す。 ぶにっと肉が揺れた。 「召し上がれ」 やめようと言う者がいないから 仕方なく続けた。 理由は簡単。 誰も自分が一番最初の卑怯者になりたくなかったんだ。 「鶏肉みたいだ」 由莉が自分に言い聞かせるように言った。 「そうだね。烏骨鶏は確かこんな色だ」 響也も手首のフリルをひらひらさせながら いかにも余裕のある笑みを浮かべる。 僕も何か言わなきゃ思ったけれど――。 履き慣れない 細身のハイウエストのパンツは窮屈で。 「……うん」 癖のある孔雀肉の臭いを嗅ぐまいと 息を止めているだけで精一杯だった。 そうしてそれぞれが 一口目の肉を口に運んだ瞬間。 「……」 「……ああ、神様」 キャンドルは吹き消され 晩餐会はお開きとなった次第だ。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加