見えなくともなんとなく。

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(あいつが居なくなるだけでここまで静かになるんだな) ルーカスが時計を確認すると、既に十二時を回っており、ポルターが飛び出してから二時間が経っていた。 (そろそろ寝ないと、あいつは、まぁ、すり抜けて入ってくるだろう) そう思ってから棺桶に入る、一人で夜を過ごした。 そしてルーカスは一人で朝を迎えた。 (あいつはまだ帰ってないのか) そう思って紅茶を淹れ始めたころにヘレネはやって来た。 「すみません!遅れました!」 「時間は決めてないから大丈夫だよ」 「そうですか?それならよかったです!」 安堵しながらヘレネは鞄からあの袋を取り出した。 「今日はまた違うのを作ってきました!」 そういって入っていたのはふっくらと焼き上がりバターの香ばしい香りを漂わせるシフォンケーキ。 「これはまた美味しそうな……」 朝ご飯の食べていないルーカスには垂涎の一品だった。 「また食べてないんですか?」 「他の物を嗜もうとね……」 そういってルーカスも紅茶を持ってきた。今日の紅茶はほんのり甘く温かいミルクティー そしてシフォンケーキを撮るヘレネの前に置く。 「ん?何かを作ったんですか?」 「ミルクティーだよ、ケーキと合いそうで良かった」 「いえ、紅茶に比べると私のケーキなんて……」 「価値を決めるのはお金じゃないさ」 そういってルーカスは紙とペンを用意し始める。 「それでは、食べながら経過観察のお時間です」 そう言われてそそくさとヘレネがカメラを置いて話し始めた。
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