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千鶴は、何年もの間、蔵の中で散々遊びまわって大抵のものは把握しているし、古い絵皿や香炉、香木など様々な道楽品も買ってもらったことがあるため、ある程度目は肥えている。正直なところ、蔵よりも千鶴の部屋のほうが余程宝の山だ。
千鶴の言葉に、男は笑いながら首を振った。
「いやいや。この蔵には月にいっぺん、瑠璃やら玻璃やらが入るっていうじゃねえか。それを守るために付いてるっていう門番、そこで寝かせてる奴と、お前だろ?」
「るり……? 権造は、おれが外に出ないように見張ってただけだよ」
「外回りの担当と内の番がいるのか?」
「おれは番なんかしてないってば。閉じ込められてるの」
二人の会話はどうにも噛み合わない。相手の男は、思案を巡らせるように眉根を寄せた。
「お前、ずっとこの中に住んでんのか」
「いや、月に五日くらい、無理に入れられる」
千鶴の言葉を聞いた男は目をぎょろりとさせて、大きくため息をついた。
「はあ、合点がいったよ。お宝ってのはお前のことか。まったく、噂ってのはしょうもねえもんだな」
頭をぼりぼり掻きながら、何やら一人で納得している。
「で、お前はなんで閉じ込められてんだ? 悪さでもしでかしたのか」
からかうような物言いに、千鶴はむくれた。
「違う。よく知らないけど、おれは毎月熱を出すの。熱を出す前の日から、いつもここに入れられるんだ。……それ以外のときも、自由に外に出してはくれないけど」
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