2章

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「ふうん。伝染る病か? それは俺も困るな」 あまり困った素振りも見せずに言う。 「違う……と思う。毎月同じ日に熱が出る病なんて聞いたことは無いし……周りにも同じように熱を出すのはいない」 男の顔つきが変わったような気がした。相変わらず射抜かれそうなくらいの強い光で千鶴を見るのだが、もっと、探るような色が混じる。口元に手を当てて考え込むようにしながら、今度は真剣に問いかけた。 「……熱が出るようになったのはいつからだ?」 「え……六年…前? かな……十になった頃だよ」 「……へえ」 男の目にあった疑念が確信に変わったのが見えた刹那、突然手を引かれた。よろけて前にのめった千鶴は、男の胸元に飛び込んでしまう。 「お前、外に出たくないか」 上から囁かれる声。 先程までの軽い口調と、明らかに雰囲気が違う。千鶴に何かを見たのだろう、この男は大真面目に、千鶴を外に連れ出そうとしている。 この声に頷けば、どうなるのだろう。安穏と暮らしてきた日々に簡単に終止符を打ってしまってよいのか。 そう思うのに、こくり、と頷くことしかできなかった。 「なら、連れて行ってやる」 そこで、千鶴の運命は決まった。 「お前、名前はなんて言うんだ」 「……千鶴」     
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