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路傍に転がっていた大きい木の枝を拾って、ぱきりぱきりと枝を折って払った。すると、立派な杖が出来上がる。
「握ってれば、足の悪い爺さんか婆さんに見えるさ。おぶってても変に見えねえだろう。俺は差し詰め孝行息子だ」
辰之介は軽々と千鶴を背負って、早足で歩き出した。
体を包む布と、辰之介の体の温かさに挟まれて、ふくふくとぬくい。
「そこら中、初めてだらけだろ。何でも聞いていいぜ」
「この布、どうしたの」
「これにお宝を包んで持って帰るつもりだったんだよ」
「なんだ、合ってるじゃないか、使い途」
「こら。自分でお宝を名乗るんじゃねえ」
軽口を叩いて笑い合う。
「じゃあ、次は……ええと、辰は人攫いなの?」
昔読んだ本の中に、年端もいかない子を攫って、商家へ労働力として売ってしまうという者が出て来る話があった。その話の中では、人攫いの被害にあった姉弟が成長してから自分を攫った男を見つけ出し、簀巻にして川に流して、二人仲良く親元へ帰っていた。
「俺を攫って、どこかに売っちゃうとか」
「そう見えるか?」
「見えない」
「わかってんじゃねえか。俺は、殺しと人攫いだけは嫌いだ」
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