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こらえきれなくて、また吐息を漏らす。体の奥で弾けた熱はとろりと腰の奥へ溜まって、これまで経験のない、そして言いようのない、ぞくぞくと甘い感覚をもたらしてくる。
「……は、うぅ、なに、これ……?」
未知の感覚に、千鶴は思わず辰之介の手にすがりついた。下腹が熱い。性器などひとつも触っていないのに、家にいたとき、時折生理的な欲求に従ってした手淫と似た感じをおぼえる。なのに、あの無理に激しく高めていくものとはまるで違う、じわじわと炙られるような快感と焦燥が千鶴の体を蝕む。
「辰、辰……」
これまで熱を出したときには、こんなことはなかった。ただだらだらと微熱が続き、気力を失っていっただけだ。
助けてと目で訴えるが、辰之介は自らの手にすがりながら顔を真っ赤にさせる千鶴をただ見下ろしていた。その顔には驚きと、情欲の炎がちらちらと見え隠れしている。
「千鶴」
この感覚がなんなのか、怖い。どうにかして助けてほしい。その思いが募って、掴んでいた辰之介の手を強引に引いて、彼の耳に口を寄せた。
「辰、たすけて……あつい」
言葉は熱い吐息となって、辰之介の耳に吹き込まれる。
首に手を回してかじりつく千鶴には、もう辰之介の表情は見えない。しかし、彼が苦しげにこぼした言葉は、はっきりと聞き取れた。
「悪い。俺のせいだ」
(なんで……?)
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