5章

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「本当に箱入りなんだなあ、お前は! 大事にされてんだか、馬鹿にされてんだか、もうわかんねえくらいだ」 辰之介は、千鶴の頭をぽんと叩く。 「箱入りでも、子供の作り方は知ってるだろ?」 「知ってるよ」 「で、千鶴。お前は男だよな。女を孕ませるほうだ」 首肯。 「でも、ただの男じゃない。孕める男なんだよ」 思わぬ言葉に、千鶴は面食らった。男が孕めるなんて、これまで山ほど読んできた本の中では一つも書かれていなかった。 「冗談だと思うだろ? だが、本当だ。孕める男っていう言い方は語弊があるかもしれねえな、女でも同じような性質の奴がいるから……まあ、そういう奴らは、月に一度、体が子供を孕む準備をする。平たく言えば、発情する。春の猫みたいに体が男を欲しがってたまらなくなる」 非れもない言葉に、千鶴はいたたまれなくなって慌てる。 「でも、俺が家で熱を出してたときはそんな……妙な気持ちにはならなかった」 「お前は、孕む準備が仕切れてなかったのさ。「処女」のときは、まだ」 目の前の端正な顔に、少しだけ欲の色が滲む。 「孕める男は、首の後ろの、ここ」 「……っ」 突然、辰之介が千鶴の項に指を挿し入れる。背筋を稲妻が走るような感じがして、千鶴は体を震わせた。     
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