5章

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「熱の出てるときにここを男に咬まれると、「処女」を失う――不思議なことにそれからはもう雌の体になっちまう。雌になったら、ここを咬まれれば無理にでも発情させられる。しかも」 つう、と辰之介の指が滑っていく。そこには、昨日辰之介が付けた歯型がある。溝をすうとなぞられると体中がざわめいて、逃げてしまいたい。それなのに、指だけではなく辰之介の瞳が、千鶴を捕らえて離してくれない。ああ、昨夜と同じだ。 「処女を失えば、とんでもない色香が出てきて、どんな奴でもお前のここを咬みたくなる」 耳元で囁かれた声が、千鶴の頭にとろりと染み込んでいく。 千鶴がくずおれてしまいそうになったところで、突然、辰之介がぱっと手を離した。解放された千鶴はどくどくと鳴る胸を抑えながら、深く呼吸した。息が熱い。 「だから、そういう奴らから襟巻を巻いて首を守る。これも不思議なんだが、ここを隠せばある程度は色香が抑えられるらしい。だから、孕める男や同じ性質の女は、襟巻って名で呼ばれる。真夏でも首に何か巻いてる奴ら、見たことないか?」 問いかけられて、千鶴は少し涙を浮かべながら、首を横に振った。 「そうか。外に出してもらえねえんだもんな。そもそも襟巻は少ないし、襟巻が外を出歩くのも珍しい。……色々、巻き込まれやすいんだよ」     
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