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倡妓と言われて納得した。起き抜けの無防備な姿とはいえ、凄絶なくらいの色気だ。
「昨日燭台も借りたところに度々すまねえんだが、千鶴も襟巻なのにひとつも自分の首に巻くもんがねえ。しばらく貸してやってくれねえか」
とろとろとしていた目が、千鶴も襟巻、というところを聞いた途端にぱっと開いた。
「ええっ」
律は辰之介と千鶴を交互に見くらべた。
「……いいよ、好きなのを持っていきな。返さなくってもいいよ。そこの箪笥の、一番上。蝶が彫ってある抽斗」
「おお、悪いな。ほら、行ってきな」
言われるままに抽斗を開けると、様々な素材や意匠の襟巻がいくつも詰められている。
考えて、あまり目立たなさそうなものを選んだ。木綿に紺で模様を染め抜いた、手ぬぐいのようなものだ。
律が布団から声を投げかけてくる。
「そんなんでいいの? もっと綺麗なのたくさんあるよ」
「いい」
手に取った襟巻を、ふわりと首に巻いてみる。何も変わった気はしないが、これで辰之介の言う「護身」ができているのだろうか。
「こら」
いつのまにか隣に来ていた辰之介が、千鶴の頭に軽く拳骨を降らせた。
「ありがとうくらい言え」
「……あ、ありがとう」
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